お役立ちコラム
2024年08月30日
“声”だけで正しく伝えられますか?ブラインドサッカー® に学ぶチーム間の意思疎通
みなさんの職場では、コミュニケーションが円滑に行われていますか。
新入社員の配属や従業員の転属も一通り落ち着き、いよいよ年度の後半戦へと向かっていくこの季節、組織ごと・チームごとの結束強化、あるいは一体感の醸成を組織マネジメントの課題とする職場も多いのではないかと思います。
同じ環境、同じ時間を過ごしていても人の思考がそれぞれ違うように、多様な人が集まって仕事をする職場であれば、それぞれ人の認識が違っていて当たり前。それぞれの違いがある中でも職場のコミュニケーションを築き、同じ目標に向かって仕事のパフォーマンスを上げていく、組織管理者にとって、そんな悩みが尽きないのではないでしょうか。折しも、この夏はパリ2024オリンピック/パラリンピックが開催されている時期です。団体スポーツのパフォーマンスに自社の組織運営を重ねて応援しているビジネスパーソンも少なくないかもしれません。
先日わたしたちの本社にて、NPO法人日本ブラインドサッカー協会によるコミュニケーション研修の機会が設けられ、総勢13名(会議室4名・オンライン9名)が参加しました。協会からは選手1名、進行を務めるファシリテーター1名がオンラインで参加、オンライン・オフライン混合のワークショップ形式の研修となりました。今回はその模様をレポートして、職場コミュニケーションを向上させるヒントをお届けします。
◆NPO法人日本ブラインドサッカー協会(以下略JBFA)について◆
「ブラインドサッカーを通じて視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現すること」をビジョンに掲げて、ブラインドサッカー、ロービジョンフットサル日本代表の強化、クラブチームや選手の育成のほか、社会課題解決のために、スポーツ推進・啓発に関する事業やダイバーシティ&インクルージョンに関する事業などを展開しています。
※ブラインドサッカーはNPO法人日本ブラインドサッカー協会の登録商標です。
◆ワークショップ講師/内田 佳(うちだ けい)選手について◆
今回のワークショップは、JBFAの職員、かつブラインドサッカー選手の内田さんが指導役です。内田選手は先天性弱視の障がいを持ちながら、ブラインドサッカーの日本選手権では2度の準優勝実績を誇り、現在はスフィーダ世田谷BFCに所属する現役選手です。
その傍ら、JBFAにて一般企業・学校などの団体向けの研修プログラムの企画立案や研修資料の作成などを担当。研修では受講者のビジネススキルの向上だけでなく、「障がい者が周囲にいることを特別なことだと思わない世界」の実現をめざしていると内田選手は語ります。そんな内田選手の趣味は、読書。本を読む際には、電子書籍の拡大機能や虫眼鏡を使用しているとのことです。
[©JBFA]
認識や言葉のズレを確かめる
研修冒頭ではまず、内田選手からご自身の「見え方」についての共有がありました。メガネやコンタクトレンズでは矯正ができない視野や色覚をスライドで表現し、普段どのように見えているのかを参加者に示します。
内田選手は先天性ですが、何かの拍子に後天性でこうした見え方になってしまうことは誰にでも起こり得ると感じられました。単純にデスクワークで長時間集中しているだけでも、一時的に目の機能が低下したりするでしょう。「障がい」と認定されないまでも、慢性的な体の不調に悩んでいるビジネスパーソンは少なからずいます。
「障がいのあるひとを身近に感じて欲しい」「障がいのある人を(マイナスな意味で)特別扱いしない」という内田選手のメッセージから、同じ空間で、同じように見ていても人によって違う情報の受け取り方をしている可能性があると教えられた気がします。
■ワークショップ(1):目隠しをして自身の感覚に集中する
ワークショップでは会議室でもオンラインでも、基本的に目隠しをしながらワークを行いました。まずはファシリテーターからいくつかのお題を伝えられ、頭に思い描いたイメージ通りに手を動かせるかをやってみます。
目隠しをほどいて書いたものを会議室、オンライン双方で見せ合いました。文字や図を手書きする機会が少なくなっているだけに苦戦するものと思われましたが、極端に紙の上を外れる人もなく、参加者みんな意外とよい感じに書けています。
ファシリテーターや内田選手からも「なかなかやりますね」と褒められて、なんだかみんな得意顔です。
■ワークショップ(2):目隠しをしたまま説明を聞いて動きをまねる
笑い声が絶えず、和気あいあいとした雰囲気の中、次はコミュニケーションワークへと移ります。内田選手が身体を動かしながら説明し、参加者はその説明を聞いて動きます。
先ほどのワークで頭の中のイメージをペンで表すことができていた人でも、相手の言葉から具体的な動きをイメージできるか、そのイメージを身体の動きで再現できるかとなると勝手が違う様子。動きを再現できた人から違う動きをしている人に「違っていますよ」と声を掛けると余計に混乱するようで、さらに混乱を招きます。
[自身の感覚に集中するワークよりも難易度が上がり、一筋縄ではいかない]
このワークでは相手の言うことをよく聴くこと、聴いて理解することの大切さを実感できました。また、目隠しをしているからかもしれませんが、悩んでいる人へいろんな人が声を掛け出すとパニック状態になる、ということも感じられました。
■ワークショップ(3):声だけで共通のイメージを持ち同じ絵を描く
最後のワークは目隠しを外して隣席との距離を空けて行いました。決められた複数の要素を手掛かりにみんなで同じ見た目の絵を描くというもので、その形は自由です。“声”だけを使って形を固めていく必要があるものの、各々それぞれのイメージが異なるようで、なかなか1つの形にまとまりません。
結果的に、グループ内の1名から「誰かが指令をしないとまとまらない」という意見が出て、みんなで話し合うのではなく、「特定の1人の指示の下、全員がそれに従って書く」という方針になりました。絵を描く側は指示を聞きながら、それぞれ確認を返して描き進めます。
[最後のワークは、参加者がお互いのイメージを確認しながら進めていく]
指示する側も絵を描く側も言葉のキャッチボールで各々のイメージを確認しつつ、「そういうことか!」といった声も上がりながらお互いの意識合わせを深め、時間制限内にみんなが同じ絵を描くことができました。
ワークショップ参加者の感想
今回のワークショップは、JBFAからファシリテーターと指導役の内田選手にオンラインで参加いただき、約1時間の構成で開催することができました。オンライン・オフライン混合のワークショップとなりましたが、この内容について参加者からは
「10名以上の人が参加する中で一体感のある体験会ができた」
「話を聞くだけの講演形式ではなく、実際に体験することでより身近に感じられた」
「「指示の出し方」「物事の伝え方」が大切だと、再認識できた」
といった好意的な意見が寄せられました。
その中でも「単なる体験に留まらず、短時間での言語化のトレーニングになる」といった声や「限られた手段の中で人に何かを伝えることの難しさに気づける」といった声が印象的でした。
コミュニケーションは相手があって初めて成り立ちます。思っていることを自身で表現できるか、相手に自身の意思をどう伝えられるか、お互いの気持ちを擦り合わせられるか、そうしたことはビジネス・プライベートの別なく、人が共存していくうえで必要なスキルのように思います。
最後に、参加者アンケートから今回のワークショップを通じて得られた学びについて一部紹介します。
・運動の言語化や感覚の言語化はなかなか難しく、例示でイメージが共有できるといいのですが、バックグラウンドが違うと必ずしもうまくいかないなど、いろんな気づきがありました。
・見えないことに対する認識が大きく変わり、工夫をしながら伝えることの大事さを学びました。
・自分の「普通」は他の人にとって「普通」であるとは限らないですし、自分の解釈が正しいとも限らない。あいまいな部分はお互いの確認が必要です。
・見えていることって実はすごく大切だと改めて感じるとともに、言葉だけで相手に正しく伝えるなら、その相手が理解できるように的確な言葉を使わないといけないと感じました。普段の会話でも実践していきたいです。
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同じ職場であっても考えていることは人それぞれ。今回のワークショップを通じて、意思疎通の難しさを自覚し、相手を思いやるコミュニケーションの大切さを参加者は学べたようです。それぞれの職場で実践していけばチームの一体感が高まり、仕事のパフォーマンスも一段と上がるのではないでしょうか。
わたしたちNTTアーバンバリューサポートでは、業務効率・生産性が上がるオフィス作り、また、偶発的なコミュニケーションが生まれるような仕掛けのあるオフィス作り、を提案しています。下記の記事「本社オフィス仮想ツアー(後編)」では、本社オフィスを事例として、ミーティングやアイデア出しといった、コミュニケーションワークを促進するための「コミュニティラウンジ」や、協業による作業を支援するためのICTツール、自然と立ち寄りたくなる「マグネットスペース」など、さまざまなワークプレイスに関するアイデアを紹介していますのでぜひご覧ください。
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■NTTアーバンバリューサポート お役立ちコラム「ワークプレイス構築のヒントがいっぱい、本社オフィス仮想ツアー(後編)」■