お役立ちコラム

2023年12月06日

広島市初のPark-PFI事業で球場跡地を新しい市民の居場所に

 2023年3月末、広島県広島市の旧市民球場跡地に「HIROSHIMA GATE PARK(ひろしまゲートパーク)」がオープンしました。この公園は、広島都心部にあって新しい価値を市民に提供し続ける公園として、広島市初の「Park-PFI(公募設置管理制度)」により整備されました。当社は、この公園の指定管理者を構成する共同事業体のうちの1社として収益施設運営と公園全体の管理を担い、その魅力向上に努めています。
 開発の経緯や運営上の課題、今後の見通しなどについて、園内の管理事務所であるパークオフィス総括責任者の上元、彼と同じく広島プロジェクト推進室に所属する金井・泉の3名に語ってもらいました。

Park-PFI(公募設置管理制度)を活用して新しい公園を整備

 旧広島市民球場跡地は、2009年までプロ球団・広島東洋カープ(以下略カープ)の本拠地だった場所。ショッピングモールのパセーラや、バスセンターを抱える広島センタービル、この球場跡地を含む基町には広島城や広島県庁があり、隣接する紙屋町や八丁堀などとともに中四国最大のビジネス・商業ゾーンを形成しています。現在の広島市民球場(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)が広島駅の東側へ移転した後、広島市は球場跡地の活用について議論をスタート。⻑期的なまちづくりの視点を踏まえ、2021年に初のPark-PFI事業として公募が行われました。

 この公募に計画書を提出したのが、当社のグループ会社であるNTT都市開発を代表法人として、当社とNTTファシリティーズ、さらに広島の歴史とともに発展してきた複数の地元企業で構成されるコンソーシアム(共同事業体名:NEW HIROSHIMA GATEPARK)です。その提案が認められて、広島市からコンソーシアムが指定管理者の指定を受託。こうして2023年3月31日、「HIROSHIMA GATE PARK(ひろしまゲートパーク)」の開業に至りました。

この事業概要について詳しくは、別途ページに掲載のお役立ちレポート「みんなが集まる公園をつくろう-新時代の公園運営-」 をご覧ください。

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※ Park-PFI(公募設置管理制度):2017年の都市公園法改正により新設された制度で、飲食店などの公園施設を設置・運営する事業者を公募で選び、その収益を特定の公園施設整備に充てる仕組み。公園にとっては民間企業のノウハウを生かした管理運営により公園の魅力を高めることができるうえ、民間資金を活用することで公園の整備や管理運営にかかる負担が軽減できるとあって、新しい時代の公園整備手法として注目されている。都市公園の利用者にとっては、飲食店などの施設が充実することで利便性や快適性が増し、それがひいては地域の活力や賑わいの創出にもつながると期待が高まる。










【「HIROSHIMA GATE PARK(ひろしまゲートパーク)」全景】

平和で穏やかな時間の素晴らしさを実感できる公園に

 「HIROSHIMA GATE PARK(ひろしまゲートパーク)」は、「世界に誇れる求心力ある市民公園」として、市民のみならず広島を訪れる国内外からの観光客など老若男女問わず多様な人々が集い、平和を実感できる市民公園をめざしています。新しいライフスタイルへの入り口(GATE)、また歴史・文化施設の集まる地域や商業中心地といった地域に接する魅力ある中央公園への新たな入口(GATE)になるようにとの思いが、その名前に込められています。

上元「観光で来られる方はやはり広島平和記念資料館や原爆ドームに行かれることが多いのですが、そうした方々に平和で穏やかな時間の素晴らしさを感じていただけるような公園でありたいと思っています」








【パークオフィス総括責任者:上元】

 そもそも、原爆ドームを含む平和記念公園と、旧広島球場跡地を含む中央公園とは1950(昭和25)年に発表された丹下健三氏の「広島平和都市建設構想(案)」に基づいて一体となって造成されてきた歴史があり、今回の整備計画にもその記憶の継承が反映されています。

 HIROSHIMA GATE PARK(ひろしまゲートパーク)の西端の歩行路、ここは「ピースプロムナード」と名付けられました。平和記念資料館、慰霊碑、原爆ドームを結ぶ軸上に整備された全長190メートルの散歩道は、どこに立っていても視界の先に原爆ドームをとらえることができます。舗装の一部には路面電車の被爆敷石を使用。2023年5月のG7広島サミットでは各国首脳らによる被爆桜の2世の苗木が平和記念公園内に植樹されましたが、続く10月には「ピースプロムナード」にて、首脳らの配偶者によるパートナーズ・プログラムを記念する被爆桜の苗木の植樹式が行われました。



      【ピースプロムナード。真正面に原爆ドームを望む】

 また、「HIROSHIMA GATE PARK(ひろしまゲートパーク)」には、随所に旧広島市民球場の記憶を感じることができる仕掛けがあります。例えば、かつて球場外壁があった部分にはぐるりと樹木が植えられ(呼称:グリーンリボン)、フィールドだった部分を囲むようにベンチにもなる構造物(呼称:ユニバーサルリボン)が設置されています。中央部に広がるイベント広場にはホームベースとピッチャープレートを模した記念プレートが埋め込まれていて、当時を知る人がここに立てば、幾度となく観客を沸かせた活気ある球場を思い起こせるのではないでしょうか。その他、外野ライト側のスタンドのベンチの一部を移設した「憩いのスペース」やカープの優勝記念碑がある「勝鯉の森」などは、記念撮影のスポットとしても人気だそうです。

上元「旧広島市民球場は、市民なら誰もが一度は訪れたことがあるというほど長年にわたって親しまれてきた場所です。その跡地にある施設ということで、旧市民球場と同じくらい愛着をもっていただける場所になるのが目標ですね」

年間を通じて多彩なイベントが開催される賑わいのある公園に

 イベント広場は、コンソーシアムの代表法人を務めるNTT都市開発が命名権(ネーミングライツ)を取得し「HIROSHIMA GATE PARK PLAZA」と名付けられました。この広場は年間を通じて多くのイベントの開催が予定され、初年度は週末を中心に年間90日以上の開催が目標とのこと。国際イベントから小規模なイベントまでバラエティ豊かなスケジュールが組まれています。特に飲食系イベントは好評で、すでに多くの人々が足を運んでいるそう。

※イベント情報はこちらから

イベント アーカイブ - ひろしまゲートパーク|HIROSHIMA GATE PARK

 「HIROSHIMA GATE PARK PLAZA」を囲むように建てられているのが8棟からなる商業施設「SHIMINT HIROSHIMA(シミントひろしま)」です。公園との親和性を意識し、 屋外での活動や⾃然を楽しむシーンにマッチするショップやレストランが入居しています。なかには広島県内の⼈気店や、オープンテラスで食事を楽しめる店もあります。Park-PFI事業としては、これら商業施設の収益によって、「ピースプロムナード」や「HIROSHIMA GATE PARK PLAZA」といった特定公園施設の管理・運営が賄われているということになります。

金井「イベントをきっかけに、「SHIMINT HIROSHIMA(シミントひろしま)」を知ってくださる方も少なくありません。“公園”というとなんとなく芝生や土の空間が広がっているというイメージがありますが、「HIROSHIMA GATE PARK(ひろしまゲートパーク)」はそれだけではなく、楽しいことがたくさんある場所なんだということをもっとPRしていきたいと思っています。現在ではまだまだ「旧広島市民球場跡地」のほうが“通りがいい”状態ですが、今後、イベント広場の名称の「HIROSHIMA GATE PARK PLAZA」という名前も馴染むようにしたいです」



              【広島プロジェクト推進室:金井】

上元「友達や家族で週末どこへ行こうかという話になったときに、とりあえずここに来れば、何か楽しいことをやっているだろうという認識が広まってくればいいですね」

都市公園の新たなライフスタイル「オソト文化」を発信

 「HIROSHIMA GATE PARK(ひろしまゲートパーク)」はイベント広場に限らず、普段使いの新しい価値を市民に提案しています。それが、野外で過ごす新たなライフスタイル「オソト文化」です。

 園内にはちょっと腰かけることができるスペースがたくさん設けられていて、ランチタイムには、お弁当やお店のテイクアウトを食べる人たちの姿を、あちこちで見かけられます。夕方になると、「HIROSHIMA GATE PARK PLAZA」の一角にある「大屋根ひろば」に、教科書やノートを広げている学校帰りの学生たちの姿が目立つようになるそう。この辺りは屋外でもWi-Fi環境が整っているため、リモートワークの場所としても使えます。




【「大屋根ひろば」はWi-Fi環境が整備されていて、リモートワークにも便利】

 盛り土の起伏を利用した遊び場や水場があり、小さな子連れのファミリーも多く訪れているそう。柔らかいボールならボール遊びもOK、外で安心して子どもを遊ばせることができます。もっと年齢が大きな子どもやアーバンスポーツをしたい方向けには、スケートボード場を含むアーバンアクティビティサイトがあります。

ペットの足洗いにも使える給水設備やリードをつないでおくポイントも整備されているので、ペットの散歩ついでに買い物や食事を楽しむこともできます。

 国籍や年齢、男女の別、市民・観光客を問わず、さまざまな人々が思い思いの時間を過ごせる公園、これを裏で支えているのが、パークオフィスの存在です。パークオフィスには当社スタッフが常駐。充実した“オソト⽂化”を楽しめるように、来園者の問い合わせ対応や公園の遊び道具の貸し出し、写真撮影のお⼿伝いなど、まさにパークコンシェルジュのような役割を果たしています。公園を彩る⼤⼩豊かな樹⽊や草⽊、芝⽣の⼿⼊れ、⽔やりなども⽋かせません。いつ来ても居⼼地のよい空間だと感じてもらえるよう、⼼のこもったメンテナンスを⾏っています。

 「SHIMINT HIROSHIMA(シミントひろしま)」に⼊居しているテナントの管理・サポートも、パークオフィスの大切な業務。売上管理や共有部分の清掃・警備などのほか、テナント独自で開催するイベントへの協⼒などを⾏うこともあります。屋外にあること、しかも分棟ということで商業ビルの屋内店舗と異なる管理面の配慮が必要だ、そう語ってくれたのは当社の泉です。

泉「例えば構造上、店舗の近くにはバックヤードが作れないので、搬入や荷捌きのための場所、ゴミ捨て場などが遠くなる店舗がどうしても出てきます。雨の日などは特に配慮が必要です。その辺りのことは話し合いを通じてテナントのご理解をいただくように努めています。ルールなのでという一言で片づけるのではなく、公園の魅力を高めるためであるということを丁寧に説明します。私たちも店舗側の話はきちんと聞き、できることに関しては柔軟に対応するようにしています。新しい施設なので、管理側・テナント側どちらも試行錯誤しながら、より良い環境を協力して作り上げていきたいです」


【広島プロジェクト推進室:泉】

 全国の自治体でも広がりつつあるPark-PFIの事例ですが、イベント広場を中心に置いた公園運営という形は過去に例がなく、参考にできる事例もありません。初年度ということもあって、まさに日々手探り状態で運営しているそう。

金井「酷暑の夏も過ぎ、外で過ごすのが気持ちのいい季節になりました。そういう意味ではこれから、「HIROSHIMA GATE PARK(ひろしまゲートパーク)」の魅力をより感じていただけるのではないかなと思っています。これから力をいれていきたいのはテナント各店舗とイベントとの相互送客の仕組みづくり。双方がコラボレーションできる企画を立てるなど、施設としてさまざまなアイデアを出しているところです」

 「HIROSHIMA GATE PARK(ひろしまゲートパーク)」では、協力先の関係企業各社とともに最新のICTを活用したさまざまな販促施策・顧客サービスに取り組んでいます。将来的に周辺地域全体の回遊の目となれるよう、SNSを用いたデジタルマーケティングや、スマートフォンを介した混雑度発信、マイクロモビリティの管理サービスなど実証実験も園内では数多く試されていて、先進的な取り組みは日々進行中。2024年には中央公園の北側に、新しくサッカースタジアムが完成する見込みで、広島駅周辺の再開発も含めていよいよ広島の市街地が活気付くのは間違いないでしょう。

 自動走行ロボット〈ハコボ〉を活用した情報発信・巡回パトロールを実施しています。
(実証実験中)

 広い園内を次世代モビリティ〈C+walkT〉で移動できます。
公園内での安全性を検証する走行試験を経て、一般向けのレンタルサービスが開始されました。

※予約サイトはこちら:

ひろしまゲートパーク C+walkT レンタルサービス

上元「隣接する広島県立総合体育館(広島グリーンアリーナ)でコンサートやイベントがある時は、「HIROSHIMA GATE PARK(ひろしまゲートパーク)」の来園者がかなり増加します。それを考えると、サンフレッチェ広島のホームとなるサッカースタジアムのオープンはさらに集客に期待がかかります。とはいえ、ただ人が来るのを待っているだけでなく、そうした来園者に合わせた仕掛けを何か考えていきたいですね。この公園単体ではなく、アリーナやスタジアムを含む中央公園という大きなエリア全体で考えることが必要になります。紙屋町など近隣の商業エリアとの回遊をどう作るか、また、平和記念公園を目的として来る観光客にさらなる観光スポットとしてどうアピールするか。ひいては広島という街の魅力を高めるためにはどういうことが必要なのかという視点が求められることになるでしょう」










【広島城址の堀越しに見るサッカースタジアムの建築風景】

 当社は、広島市中央公園エリアマネジメント協議会の一員でもあり、「広島城三の丸整備等事業」のPark-PFI事業にも関わっています。「HIROSHIMA GATE PARK(ひろしまゲートパーク)」と並行して、広島城址の「広島城三の丸整備等事業」が続きますが、他の地域の参考例になるような都市公園の管理・運営をめざしています。これからも広島市の地場企業や市民と同じ目線で、より良い街づくりに貢献していきたいと思っています。

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※掲載写真(モビリティ2枚の写真を除く)や取材対象者の役職は、取材日(2023年9月20日)時点のものです。
※本文は、記事公開(2023年12月5日)時点で最新の内容としています。

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